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  • ひと 「NPO法人もりずむ」代表 藤崎 昇 さん
  • ひと 「NPO法人もりずむ」代表 藤崎 昇 さん

    4月に、令和元年度全国林業コンクールで最優秀の農林水産大臣賞を受賞された「もりずむ」さん。遅まきながら、「おめでとうございます」の気持ちを込めて、代表の藤崎さんにインタビューをさせていただきました。
    ついつい話が弾んで、3時間以上お付き合いいただきました。






    関東ご出身で、なぜ林業のお仕事を始められたのですか?

    横浜で生まれ育ちました。生活の土台を作る地味な仕事に憧れ、工学系の大学を卒業後に土木会社に入り、ダム建設や河川工事の調査や設計、コンサルタントの仕事をして、全国の山間部を飛び回っていました。ところがどこへ行っても、林業の衰退による山林の荒廃が進み、「儲からない。自分の代で終わりにしたい。林業やりたかったら山をあげるよ。」という地主さんの嘆く声を聞き、何か自分にできることはないか、林業を支えたいという思いが次第に強くなりました。

    また、インドネシアの河川工事にも携わり、長期に渡り滞在したこともあります。貧しいながらも家族の絆を大切にして自然と共に生きる人々に出会い、人間の幸せとは何かを深く考えさせられました。

     土木の仕事は好きで、生きがいも感じていたのですが、それら大規模工事には政治の力が加わることが多く、不本意ながら従わねばならないことに深く失望したこと、そして残業続きで家族との時間が持てない生活が続くこともあり、思い切って41歳で転職しました。

                豊かな山は 豊かな暮らしの源

    山を豊かにすることは、水が豊かになり、自然環境ばかりでなく、ひいては人の暮らしも豊かになります。災害に強くなり、国土保全の面からも重要なことであり、まさしく土台の部分ということになります。そのためには「食べていける林業」にしなければなりません。木を切って何かに活かす。これなら、これまでの経験を活かして設計提案ができると思ったのです。そこで妻の実家のある津市に移住し、中勢森林組合で林業の仕事に就きました。その間、林業関係者だけでなく様々な方々との出会いがあり、更にもっと自由な立場で活動したいと思って独立しました。

    主な事業は建築用木材の販売ですが、なぜ会社でなくNPOなのでしょう?

    そう、普通なら株式会社ですよね。しかし、NPOでも利益を上げていいのです。その事業を大きくするために使うのであれば。
    どちらにしようか迷いましたが、単に商売として事業を行うのではなく、組織として社会に貢献する活動をしたいという思いが強く、NPOにしました。

     

               付加価値を付けた「もりずむの木」

    建築用の木材販売が主な事業ですが、林業衰退の大きな要因は、木材価格の低迷と事業収益の低下にあります。安価な木材に付加価値を付けなければ利益を上げることはできません。それが「月齢伐採」、「葉枯らし天然乾燥」という伝統的な林業です。この方法は、蒸気による強制乾燥とは違い、木材が本来持っている長所である色つや、粘り強さ、耐久性、防蟻性、香り、セラピー効果を最大限引き出すことが最近の調査研究で確認されつつあります。月齢の新月期に伐採して3か月~1年間、葉を茂らせたままの状態で山で乾燥させると、木の油分がしっかり残り、柱などの構造材だけでなく、床材に使用するだけでも部屋の中で森林浴できるのです。「もりずむの木」というブランド名で販売しています。

            もりずむの木」の家で見学会を

    近頃は県外からの注文も増えているようですが、どのようにアピールされていますか?

    「もりずむの木」の良さは、いくら言葉で説明しても理解していただくのは難しいですが、工務店さんや施主さんのご協力により、新築された家の見学会を行っています。気持ちいい空間を体感していただくことが一番です。それと何といっても施主さんのクチコミですね。こだわりを持った施主さんに喜んでいただき、それを友人知人に話してくださるのです。

    また県内各地のイベントに参加して、子ども達には木のおもちゃで遊んだり、木工細工をしたりと、直接木に触れることのできる機会を作っています。小中学校への出前授業も行っています。大人向けには、実際に森に入っての「木こり体験ツアー」を開催しています。
              
            木に触れる体験(積み木遊び)                 森で木こり体験

              食べていける林業へ=複合的な取り組み=

    「木の駅」での薪の販売はいかがですか?

    林業全体の収益性を向上するために、各種事業を複合化することを考えました。「不用木」はもちろん、豊かな「森林空間」も有効利用して、換金化できるような事業を組み合わせるということです。「木の駅」の事業もその中の一環です。

    不用木だけでなく、柱・梁桁材になるような立派な大きな木でも、上部は枝が多いため、建築資材にはなりません。それら不用材を80㎝に切って搬入していただき、その代金として地域通貨券をお渡ししています。地域でお金が回り、地域のみんなが幸せになることが大切だと考えて、そのお手伝いししています。最近では薪ストーブを利用する家庭も徐々に増えてきました。しかし安定した事業にするには、冬場だけでなく年間通して需要がある必要があります。現在大規模なバイオマス発電が注目されていますが、地域の病院や介護施設など小さい単位で、薪ボイラーが普及できるといいなと考えています。  
                                                  不用材は木の駅へ

    他にも、端材を利用した木工製品の販売も行っています。道の駅「津かわげ」では手に取ってご覧いただけます。今のところそれ以外はネット上で販売しています。

    サーフボードやギターを作ったのはなぜ?

    実際にいいものができました。どちらもたくさん作って販売することは難しいですが、そういった物を作るにはクオリティの高い材料が必要です。「もりずむの木」が高品質であることの証明になり、また様々な用途への可能性を示すことにもなります。

             
             サーフボード                     ギター(中央)

    津市の「美里水源の森」事業にも関わっておられるようですね。

    水源涵養林を活かした自然体験や環境学習ができる美しい里山づくりに関わらせてきました。美里水源の森は昨年6月にオープンし、時折ワークショップイベントを開催しています。将来は子どもたちの創造性を豊かにするための、プレイパークとしての機能を待たせ、森の空間で子ども達が木登り、穴掘り、焚火など、いつでも自分の責任で自由に遊べる場にしたいと考えています。それには専門のインストラクターが常駐しなければなりません。これは木を切らない林業ですが、実現するには津市の財政支援が必要です。
              水源の森にて樹木観察会

     

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    地域の環境、地域の暮らしを考え行動したいと、林業を通して多岐にわたる様々な活動をされていることが、今回の受賞につながったのでしょう。
    他人の喜ぶ顔を見るのが生きがいだという藤崎さん。これが正しいという生き方はありませんが、それぞれが自分の個性を生かしながら、自分に合ったやり方で生きることがいいのだと思いますと、最後に笑顔でおっしゃいました。
    最近では、杉の木の幹からお茶を作る研究も始まったようです。
    今後、更なる夢に向かっての活動が楽しみです。                                                 (写真提供=藤崎昇氏)

    「もりずむ」の詳細はこちら→https://morhythm.org

     

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